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留鳥と渡り鳥

巻五 百六十
対ナイマンの陣中にて、ジャムハがワンハンに語る。

「元朝秘史三種」中文出版社
小澤重雄訳「元朝秘史」岩波文庫
  生きある白翎雀(カイルガナ)は我なるぞ
  去りゆく告天雀(ビルドウウル)は我が盟友なり
岩村忍著「元朝秘史」中公新書
  わたしはあなたにとっては、いつも側に侍る白翎雀(小鳥)だが、
  テムジンは渡り往く、告天雀(雁)である。
小林高四郎著「ジンギスカン」岩波新書
  わたしは貴方にとっては白翎雀(鴎の一種)です。
  わたくしのアンダのテムジンは雲雀です。
Ш.Гаадамбa「Монголын нууц товчоо」
  Хан! Хан! Би бол
  ハン!、ハン!(ケレイトのワンハンを指している)私は
  Хамаагүй хол нисэхгүй
  関係ない遠くへ 飛んで行けない
  Хайргуна шувуу мэт
  ハイルゴナのように
  Хамт нэг газар байна.
  いっしょに一つの場所にいる。
  Харйн миний анда тэмжин бол
  しかし、我が盟友テムジンは
  Харйж нисэх шувуу мэт
  異国へ飛ぶ鳥のように
  Хааш яаш урван одно.
  どちらへでも 向いて  行く。(日本語訳:管理人)

元史/卷001
劄木合言於汪罕曰:「我於君是白翎雀,他人是鴻雁耳。
白翎雀寒暑常在北方,鴻雁遇寒則南飛就暖耳。」
小澤先生の訳のカイルガナと管理人が訳したハイルゴナは同じです。管理人のモンゴル語がまずいだけです。
さて、鳥の種類が大きく異なっています。白翎雀は小鳥と鴎の一種、告天雀は雁と雲雀です。
共通点は、合翼魯合納はいずれも白翎雀で、鵾都兀児はいずれも渡りをします。(鵾は鳥の左側の部分が違っているかもしれません。)

合翼魯合納
調査中ですが、手掛かりがありません。
鵾都兀児
雁と雲雀ではずいぶんイメージが違います。ヒバリは日本で留鳥のように思われていますが、種類によっては海を渡るものいるようです。しかし、「元史」の記述を重視すると、鵾都兀児は雁(ガン類)になります。
ガンはハルハ・モンゴル語でгалүүです。「元朝秘史」の他の部分(ボドンチャルの鷹狩り)でガンは登場しており、そこでは 合○兀(○は 老 の右側に 鳥 です)と記載されています。一方、中国では現在、ヒバリは告天鳥・告天子とも呼ばれているようです。私は"雁"ではなく、"雲雀"を支持します。

ヒバリ類の中で中国北部やモンゴルに棲息し、かつ、渡りを行う種類の中に、ビルドウウルという名を持つものがいるか探ってみます。

モンゴルでヒバリ類にはболжморまたはжиргэмэлという名がついています。